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2019年2月4日月曜日

Re:無題

人違いです

はっきりと
ボクはそう伝えた

女は訝しげに
こちらをみながら

おかしいわ

おかしい

などと

なにやらブツブツ


ボクはすこし
気味が悪くなって

女を置いて
その場から

去ることにした


女の視線を
痛いほど
感じながら


そうして

だいぶ歩いて
恐る恐る

後ろを振り返る



女はいなかった


ボクはほっと
胸をなでおろし

すこし気持ちが楽になっていた

しかし

災難は忘れた頃に
やってくる

それからひと月
たち

ボクは
また
見ず知らずの人に

声をかけられた

ボクは

人違いであることを
しっかりと伝える

その人は

そんなはずはない

キミはだって

まだ何か言いたげな
表情で

追いかけるように

後ろを付いてくる

忘れたのか?
無視してるのか?

ブツブツ

独り言のように
呟いて

ボクはひと月ほど
前のことを

否応なしに
思いだしていた

このひと月あまりのうち

2度もこんな風に
人間違いされて

偶然だと片付けて
いいのだろうか

薄気味悪いきもちは

ボクの中で
ちょっとした

好奇心へと
変わっていた


すこし話を聞いてみても
いいかな


なんとなく
変だけど

気持ちに余裕が生まれつつある


ボクは声をかけてきた

その人を振り返る


しかし

もうその人は
そこにはいなかった

ボクは肩透かしを
くらったように

呆然として



なんなんだ

一人で
ごちた



ボクは
ひと月前の
女のことを

思い出していた

思えば
とても美しい

女性だった

そんなひとから

人違いされたことは

もしかしたら

幸運だったのか

人違い

そこから始まる

恋のシナリオ

なんてね




つゞく















2018年11月30日金曜日

ツリーらぶ

大きな木がありました

そびえるように

大きく
太く
たくましい...

その存在感たるや

ひとたび

風に吹かれても
嵐がやってきても
雷鳴とどろいても

びくともせず

そこにしっかりと...

近所に住む人々は

お父さんの木

そう呼んで
温かい目で
見守っていたのです

何年
何十年

あるひを境に
おとうさんのきは

元気を
少しづつ
なくしてゆきます

瑞々しく
目にも爽やかだった
緑の葉っぱは

冬でもないのに
萎れて
しなびて

おかしい...

村人は
首をかしげて
心配していました

お父さんのきは
森の妖精に
恋をしていたのです

いつしか
恋心は

お父さんの木の健康にも
支障が出るほどに...

妖精は
そんな彼の気持ち
気づくはずもなく

じゆうなる羽で
木々を飛び回る

ひらり...

誰一人
お父さんのきのこころ
わからない

例外をのぞいては...

例外
それは

木に住み着いていた
キツツキ

キツツキは
唯一

お父さんのきと
話ができる...

そして
お父さんのきの
純粋な妖精への恋心

その胸の内を
きいた...

キツツキは
どうしたかって?

妖精の住み着いた木を
すごい勢いでつついて

妖精が
たまらず
別のきに移れば
そこもつついて...

地道に
じみちに

毎日
毎日

いつしか
だんだんと

お父さんのきに
近づいていたけれど

お父さんの木の
妖精へのきもちは
薄らいで

その気持ちは
キツツキのほうへ...

そして
いま

大きく
たくましい木に

かわいらしい
キツツキの親子...

お父さんは
キツツキのやさしさに
気づいた

いまも
仲良く
お父さんの木を
キツツキは

優しく
優しく

お父さんの木

つついてます...






2018年10月1日月曜日

笹...


糸口見失い
途方に暮れて

なんだか
灰色に
支配されゆく

いいようのない脱力感

感じてる...

別段
とりたてて

なにか悲しいことが
あったわけでも

まして
失恋したわけでも

なかった

重ねてきた日々
後悔はしていない...

最善の道きたか
と問われたら

そんな器用に
世間渡っては
これなかった...

自然のなか

揺れる
しなる

木々の逞しさ

大地に育まれる

花の色...

優しい木漏れ日の
その向こう

どこかで

聴きはぐった

どこかで

誤った

解決の糸口
探してる

灰色の日々に
別れつげる

そのために...







2018年9月15日土曜日

夢のゆりかご...


おばあちゃんが
一人

暮らしています

一人
というのは

間違いかな?

正確には
一人と一匹

おばあちゃんは

猫が
まだ小さかったころから

ずっと一緒に
暮らしています

共に暮らす
みーは

とてもお利口

おばあちゃんの親戚から
貰われて来たときから

外にでたい

とはいわず

家の中だけで
満足してます

だから
多分

長生きできてるのかもしれない

おばあちゃんと
みーは

共に
もう

かなりの老年...

おばあちゃんが

お気に入りの
マッサージチェアに乗り

マッサージをはじめる

するとみーは

ぴょんと飛び乗り

それから
共に

揺られ揺られ
15分

揺られるのが好きな猫?

いえいえ

おばあちゃんと
揺られるのが好きなんです

ほかの誰かが
マッサージはじめても

知らんぷり...

マッサージがおわり

マッサージチェアが静かになると

おばあちゃんの膝から
みーはおります

おばあちゃんは


自分のこどもたちに言っていました

年をとったら
日向ぼっこしながら
揺り椅子で
猫を膝にのせ
編み物したいな...

いま
おばあちゃんは
一人暮らし

だけど

みーとしあわせに
暮らしてる...

ほら
今日も

マッサージチェアが
音たてると

どこからか足音

きこえる
きこえる

おばあちゃんとみーの

ゆりかご...



えんど







2018年9月11日火曜日

黒クン白ちゃん

真っ黒黒
こんがりぼうし

黒い雲の
もくもく

黒クンは
そんな雲の隙間から
生まれた

おら黒

君の悲しみ
君の孤独
君の苦しみ

黒くかくしてあげる

黒クンは
一つ

ふう

息をかける

たしかに
そこに存在したはずの

悲しみ
孤独
苦しみ

黒く
黒く
隠された...

一方
白く清らな
天使のごとき
心の現れ

白ちゃん

君の
心の中広がる
闇のような不安

大丈夫

そんなこころ抱えてるのは
君だけじゃない

白く
白く
どこまでも白く

そうありたい

そう願う
迷える彷徨い人...

白ちゃんは
とわにピュア

そんな心を見つけて...

黒クン
白ちゃん

正反対だけど
共通していた

やさしさ

やさしさ

やさしさで...






2018年9月1日土曜日

誕生日は別の顔...・後編


誕生日が来た

孝は
ベッドの上
目覚めていた...

普通に

むかえるかのように

まぶしく
目を細めて...

しかし
孝は気づく
足が動かないことに...

まるで硬直した
カチコチの膝

目覚めたばかりの孝は
不思議そうにみている...

まるで
自分に
降りかかる災難とは
気づかぬ体で...

暫く
ベッドの上
眠り続けた余韻と
さまよう朝...

先生の回診が
孝を
本当の意味で
目覚めさせる

先生は
躊躇いがちに言った...

もう
歩けるようには
ならないでしょう...

長い間
動かさず
寝たきりだったため
筋肉が硬直しています

さらに
かなり筋肉も減っていて
立って支える力は
ないと思います...

孝は
過酷な現実に
打ちのめされた...

それでも
一縷の望みを

リハビリという
試練にかける...

足を曲げる
それだけのこと

今は
だがそれが
とても難しく

そしてかなりの痛み
孝のからだに与える...

曲げた足を伸ばす

それさえも
普通なら
なんの意識なくしている動作...

孝は
文字通り

一歩から
いちから
始めること
余儀なくされた...

一歩が
遠く
遠く...

恋人は
付き添い
こころ
勇気づけてくれた

母は
献身的に看護を...

支えを感じて
焦りを感じて

誕生日から
また
はじめる

いきるための
生まれ変わるための
リハビリ...

目を覚ました孝に
与えられた

目を覚まして
はじめに口に含んだ

冷たい水が
びっくりするほど美味しかった...

目を覚まして
世界の色を

素晴らしいこの星で
命が輝いている...

そして
孝は明日も
一歩の為に
リハビリを続ける


恨むこともなく...






2018年8月30日木曜日

誕生日は別の顔...・前編


上尾孝

明日の零時に
20歳の誕生日

孝は
誰がどうみても
バリバリの優等生タイプ

言うなれば
文武両道

お勉強だけあらず
どっこいスポーツにも
長けている

そうなると
読者の皆様は
ルックスに期待されることだろう

ルックス?

八頭身のキリリとした目元
鼻筋が通り
口元は優しさを醸し出す...

んな馬鹿な?

そんな
絵に描いたような
人間離れした男が居るのか?

そう思ったあなたは
正しくもあり間違ってもいる...

上尾孝は
ずっと長いこと
眠っていた

19歳のあるときから
眠りこけ
起きることはなかった...

此処は
そう
孝の夢の中...

夢見続ける孝は
あと七日で
誕生日を迎える

晴ればれしい筈の
成人の日...

廻りで見守る人々は
複雑な面持ちである

誰もに愛されてた筈の孝が
何故に
こんな状態に陥って居るのか

誰も
知る由がなかった...

孝は
夢を見る

長い
長い間

眠る
夢を見る...

未来を孝は
キリリとした瞳で
見据えていた

眠って居るのに?
見えるのか?

疑問に思うことだろう

世の中には
閉ざしたほうが
わかるときもあるのだ

七不思議
八起き

その証として
孝には
すべてが見えていた

この先の未来
これからの人類

まるで
なにか約束をした

それを
守るかのように
夢を見始めた

その夢のなかで
すべてを知るのだ...

孝が
選ばれた人間だというのは
作者の贔屓目だけに止まらず
神様の出した課題
クリアしてゆく孝の
これからの春に...

眠りはじめて一年

外には
小さな
白い妖精が舞う

一面
白く染まった
汚れなき世界...

銀世界が
未来を照らす?

孝の
これからを
暗示しているかのように...


エピローグ

カウントダウン開始
誕生日迄あと五日

孝が
まるでいまにも
起きてきそうな感じがして
孝の家族を始めとして
孝にはじめてできたガールフレンドも
期待寄せている...

その度に
悲しい裏切りに
胸をうちひしがれて
途方もない現実に
打ちのめされる...

五日
誕生日まで
あと100時間余り...

孝が
深く眠りについてから
毎日毎夜
思うことがあった

明日の朝には
普通に目覚めて
前みたいに
明るい屈託のない笑顔
輝かせて
挨拶交わせるのでは?

母親は
ほんとにそうなるならば
わたしの命はあげてもいい
それくらい願って止まない...

なのに?

脆くも崩れ去る
儚い夢...

次の日になっても
また一晩過ぎても
朝の挨拶は
聴こえてこなかった...

夢が壊れる...

皮肉なことに
孝の周りのひとの夢が
壊れてゆく...

正にそんなとき
当の孝は
夢の中...

夢を叶えて
夢現...

眠りながらにして
色々な世界
見ていた

世界に限らず

懐かしき友を
懐かしき恩師を

胸焦がした
初恋のひとを...

次から次へ
懐かしの
顔、顔、顔...

でも
話したくて
口を開けてみても
声は空を切っていた...

声は出ない
なぜか...

眠りのなか
今日も
一日終わる...

そして
明日の朝には
幾ばくかの期待胸に抱き
願いをかける
周りのひとたち...

そんな日が続く

誕生日に
一体何が
待ち受けて居るのか

どうしてその日が
誕生日なのか

実は
孝を襲うのは
過酷な現実

とはいえ
孝は
夢を見る
なにも知らずに...

いい夢見なよ
今は...

そんな風に
風が吹いていった...











光宿るところ

思い通りに ならないことに ありがとうを言おう 思い通りに なることなど この世に 数えるほどしかない... 思い通りに ならないことに ありがとうを言おう 感じる 育てる やり遂げる 無限に 永遠に... 思い通りに なら...